ツモ損とは何か — なぜ三麻にだけある?あり/なしで何が変わる?
結論
ツモ損とは、三人麻雀でツモ和了したときに「いない4人目(北家)の支払い分」を誰も肩代わりしない精算方式のことです。そのぶんツモの収入が減るので「ツモ損」と呼ばれます。
四人麻雀では、子がツモ和了すると 親から2、子2人から1ずつ、合計4 を受け取ります。三人麻雀は支払う相手が2人しかいないので、この「1人分の穴」をどうするかで2通りに分かれます。
| 方式 | 子のツモの受け取り | 一言でいうと |
|---|---|---|
| ツモ損なし | 親 2.5 / 子 1.5 = 合計4 | 穴を2人で分担して埋める。ツモの総額がロンと同じになる |
| ツモ損あり | 親 2 / 子 1 = 合計3 | 埋めない。四人麻雀と同じ配分のまま2人から受け取る |
数字は基本点の倍率です。ロンの受け取りが「子は4、親は6」なので、ツモ損なしはロンとぴったり同額、ツモ損ありはロンの4分の3になります。
そして、この記事でいちばん伝えたいのはここです。
ツモ損ありの卓でも、門前の手ならツモしたほうが得になることが多い。 門前清自摸和(ツモの1翻)が付くぶんで、ツモ損の目減りを上回るためです。ツモ損が本当に効くのは鳴いた手です。
以下、実装が出した実際の点数で確かめます。
なぜ三人麻雀にだけツモ損があるのか
麻雀の点数計算は、そもそも4人で分け合う前提で組まれています。子の和了の基本点を1とすると、支払いの割り当ては次のように決まっています。
| 誰が | ロンでの支払い | ツモでの支払い |
|---|---|---|
| 親 | 4(放銃者が親なら6) | 2 |
| 子A | — | 1 |
| 子B | — | 1 |
| 合計 | 4 | 4 |
ロンでもツモでも和了者の収入が4で揃うように設計されているわけです。ところが三人麻雀では子が1人足りません。ツモ和了の受け取りは自然に 2 + 1 = 3 になり、ロンの4より少なくなります。
この差をどう扱うかが、そのまま2つの方式になりました。
- 穴を埋める(ツモ損なし) — 残った2人で1人分を按分する。親は 2 → 2.5、子は 1 → 1.5 に増える。合計は4に戻り、四人麻雀と同じ感覚になる
- 穴を放置する(ツモ損あり) — 合計3のまま。ツモがロンより安い状態を受け入れる
四人麻雀にツモ損という概念が存在しないのは、そもそも穴が空かないからです。三人麻雀に固有の問題なので、三麻の議論でしか出てきません。
なお、親の和了でも同じことが起きます。 親のツモは四人麻雀なら「子3人から2ずつ=6」、三人麻雀では「子2人から2ずつ=4」。ツモ損なしなら3ずつ受け取って6に戻します。
あり/なしで何点変わるか
jongbase の点数計算エンジンに実際に計算させた値です。既定の早見表方式(1000点単位)での数字です。
子の和了
| 手 | ツモ損なし(親/子)=合計 | ツモ損あり(親/子)=合計 | 差 |
|---|---|---|---|
| 満貫 | 5000 / 3000 = 8000 | 4000 / 2000 = 6000 | −2000 |
| 跳満 | 8000 / 4000 = 12000 | 6000 / 3000 = 9000 | −3000 |
| 倍満 | 10000 / 6000 = 16000 | 8000 / 4000 = 12000 | −4000 |
| 三倍満 | 16000 / 8000 = 24000 | 12000 / 6000 = 18000 | −6000 |
| 役満 | 20000 / 12000 = 32000 | 16000 / 8000 = 24000 | −8000 |
親の和了
| 手 | ツモ損なし | ツモ損あり | 差 |
|---|---|---|---|
| 満貫 | 6000オール = 12000 | 4000オール = 8000 | −4000 |
| 跳満 | 9000オール = 18000 | 6000オール = 12000 | −6000 |
| 倍満 | 12000オール = 24000 | 8000オール = 16000 | −8000 |
| 三倍満 | 18000オール = 36000 | 12000オール = 24000 | −12000 |
| 役満 | 24000オール = 48000 | 16000オール = 32000 | −16000 |
子は一律25%減、親は一律33%減です。例外はありません。基本点の倍率が 4 → 3(子)、6 → 4(親)と変わるだけなので、当然そうなります。
ここから読み取れる重要な事実がひとつあります。ツモ損は親のほうが重い。 子は4分の3が残るのに、親は3分の2しか残りません。
点棒の動きで見る
配給原点35000点の3人で、子が満貫をツモった直後の持ち点です。
| 和了した子 | 親 | もう1人の子 | |
|---|---|---|---|
| 和了前 | 35000 | 35000 | 35000 |
| ツモ損なし | 43000 | 30000 | 32000 |
| ツモ損あり | 41000 | 31000 | 33000 |
和了者と親の差は、ツモ損なしなら13000点、ツモ損ありなら10000点。1回の満貫ツモで3000点分、順位争いの景色が変わります。
「ツモ損」でもツモが得なことがある
ここが誤解されやすいところです。「ツモ損あり=ツモは損だからロンを狙え」という説明をよく見ますが、同じ聴牌形から実際に和了してみると、門前手では逆になります。
理由は単純で、ツモには門前清自摸和という1翻が付くからです。ツモ損で目減りする25%より、1翻増える効果のほうが大きいことが多いのです。
実際に計算させてみます。立直・平和・断么九で聴牌した子の手を、ロンした場合とツモした場合で比べます(早見表方式・ツモ損あり)。
| 和了り方 | 内訳 | 符・翻 | 収入 |
|---|---|---|---|
| ロン | 立直・平和・断么九 | 30符3翻 | 4000 |
| ツモ | 立直・平和・断么九・門前清自摸和 | 20符4翻 | 6000(親4000 / 子2000) |
ツモ損ありの卓なのに、ツモのほうが2000点多いという結果です。門前清自摸和で3翻から4翻になり、早見表方式では4翻=満貫に到達するためです。
一方、鳴いた手では門前清自摸和が付きません。索子の食い清一色(ポンあり・5翻=満貫)で同じ比較をすると、こうなります。
| 和了り方 | ツモ損なし | ツモ損あり |
|---|---|---|
| ロン | 8000 | 8000 |
| ツモ | 8000 | 6000 |
鳴き手のツモは、ツモ損ありだと素直に25%減ります。 ツモ損の設定が実戦の判断に効いてくるのは、ほぼこの場面です。
まとめると、ツモ損ありの卓で減る額は次のように分かれます。
- 門前の手 — ツモには門前清自摸和の1翻が付くので、そのぶん翻数が上がったところから25%引きになります
- 鳴いた手 — 1翻ぶんの上乗せが無いので、ツモは純粋に25%(親なら33%)の目減りです
- 鳴いて満貫以上が確定している手 — 差額が2,000点以上になります(8,000→6,000 など)
安い手ではツモ損の設定が効かないことがある
もうひとつ、表を見ないと気づかない性質があります。1〜2翻の安手では、ツモ損ありとなしで点数が変わらない行があります。
早見表方式(1000点単位に切り上げ)で子が和了した場合です。
| 符・翻 | ツモ損なし | ツモ損あり | 差 |
|---|---|---|---|
| 30符1翻 | 1000 / 1000 = 2000 | 1000 / 1000 = 2000 | 0 |
| 30符2翻 | 1000 / 1000 = 2000 | 1000 / 1000 = 2000 | 0 |
| 40符2翻 | 2000 / 1000 = 3000 | 2000 / 1000 = 3000 | 0 |
| 30符3翻 | 3000 / 1000 = 4000 | 2000 / 1000 = 3000 | −1000 |
| 40符3翻 | 4000 / 2000 = 6000 | 3000 / 2000 = 5000 | −1000 |
支払いを1000点単位に切り上げているため、小さな差が丸めに吸収されてしまいます。「ツモ損ありにしたのにリーチのみツモの点数が変わらない」と混乱するのはこれが原因です。
100点棒を使う標準計算に切り替えると、この行にも差が出ます。同じ30符2翻の子ツモが、ツモ損なしなら 親1200 / 子800 = 2000点、ツモ損ありなら 親1000 / 子500 = 1500点 となり、500点の差が現れます。丸め方の話は 100点棒を使わない三麻の点数 にまとめました。
どちらを採用するのが普通なのか
どちらが「正しい」ということはなく、卓の取り決め次第です。傾向としては次のように分かれます。
- ツモ損あり — 雀荘のサンマで広く採用されています。満貫以上のツモが一律25%減るので、同じ手でもツモとロンで受け取る額が変わります
- ツモ損なし — ツモとロンの関係が四人麻雀と同じです。三麻に慣れていないメンバーが混じる卓でも数字の出方が変わりません。オンライン麻雀でも採用例が多い方式です
jongbase の既定はツモ損なしです。部屋ごとのルール設定で「あり」に切り替えられます。
運営者メモ: jongbase のツモ損なしは「ツモ和了は他家2人から標準の点数を受け取り、いない北家の分を差し引かない」方式で実装しています。人数を4人にした部屋では、ツモ損の設定自体を画面に出しません。ツモ損は「いない北家の分」を調整する仕組みなので四人麻雀には対象が無く、設定画面で隠すだけだと以前に保存した値で有効になり得るため、エンジン側でも強制的に無効にしています。下の1枚目は実際のルール設定画面でツモ損を「あり」に切り替えた状態、2枚目は点数計算機で満貫のツモを「ツモ損あり」にしたものです。


ツモ損は、打つ前に決めておかないといちばん揉める項目でもあります。他に何を決めておくべきかはセット麻雀のルールの決め方にチェックリストの形でまとめました。
jongbase での設定
対局開始前のルール設定「サンマ」の中に、ツモ損というトグルがあります。
| 項目名 | 既定 | オンにすると |
|---|---|---|
| ツモ損 | オフ(=ツモ損なし) | 子ツモで北家分を引く(=ツモ損あり) |
オフが「ツモ損なし」です。設定画面には「子ツモで北家分を引く」という補足が出るので、どちらがどちらか迷ったらそこを見てください。
この設定は丸め方(100点棒を使う)とは独立しています。「ツモ損あり × 早見表方式」「ツモ損なし × 100点棒方式」といった組み合わせも自由に作れます。ツモ損あり/なしの実数を符と翻の全行で並べた表は三人麻雀の点数表にあります。和了画面には各家の支払いが個別に表示されるので、設定を切り替えて同じ手を和了し、数字が変わるのを目で確認できます。 和了を待たずに数字だけ見たいなら、点数計算機でツモ損のあり/なしを切り替えて支払いを並べられます。対AIモードでもオンライン対戦と同じ36項目が使えるので、1人で試せます。
よくある勘違い
- 「ツモ損ありだとロンも安くなる」 — ロンは1円も変わりません。ツモ損はツモの分配にしか影響しません。
- 「ツモ損なしはツモが優遇される設定」 — 優遇ではなくロンと同額に揃える設定です。ツモ損ありのほうが「ツモを冷遇している」と捉えるほうが実態に近いです。
- 「ツモ損ありならツモは狙わない」 — 門前手ならツモの1翻があるので、多くの場合ツモのほうが高くなります。効いてくるのは鳴いた手です。
- 「ツモ損は子だけの話」 — 親も減ります。しかも減り幅は親のほうが大きく、33%減です。
- 「北を抜くとツモ損の計算が変わる」 — 変わりません。抜いた北はドラとして翻に足されるだけです。
- 「ツモ損ありだと必ず安くなる」 — 早見表方式の安手では、丸めのせいで同額になる行があります。
まとめ
ツモ損は、三人麻雀に4人目がいないことから生まれた精算の分岐点です。整理するとこれだけです。
- 麻雀の点数は「ロンでもツモでも合計4(親は6)」で設計されている
- 三麻ではツモの合計が3(親は4)にしかならない
- その穴を埋めるのがツモ損なし、埋めないのがツモ損あり
- 差は子25%減・親33%減で一定
- ただし門前手はツモの1翻があるので、ツモ損ありでもツモが得なことが多い
卓を囲む前に「ツモ損はどっち?」の一言を確認しておくだけで、和了のたびの計算違いがなくなります。
jongbase ではトグル1つで切り替えられます。両方の設定で同じ手を和了して、点棒の動きの違いを見てみてください。